<『龍誕祭』プロデューサー:山名清隆さんからのメッセージ>
 

 「てれぴかドラゴンへの道」寄せて

 『龍誕祭』プロデューサー:山名清隆

 水がぬるむとむくむくと埼玉県の地底のあたりが気になってかれこれ4年です。僕はこの外郭放水路というの不思議な施設の広報計画を立てています。99年は縦穴が出来たこと合せて直径30m深さ60mの穴の底で厳かなクラシックコンサート。蝶タイにヘルメットが印象的な「ミュージックin theアース」00年は立穴とそれを結ぶ地底トンネルが貫通したので、地底50mに天の川を創りました。3000個のキャンドルに火を灯す光の川「トゥインクリバー計画」01年は神殿のような巨大地下水槽を響きの楽器変える事に挑戦。パーカッショニスト・YAS-KAZさんの打楽器演奏は迫力満点でした。「音の迷宮」

 そんな風に、工事現場とか地底とかに縁もゆかりもない人の協力を得て、この世にも不思議な地底の現場をエンターテイメント空間に変えてもらってきました。その間の僕の合言葉は「公共事業を交響事業にしよう」でした。水のためだけに作られた空間を1年に1度だけ人間が主役の歓喜の空間にし、ホントに地底でいろんな人がたくさん交わって響き合うような機会を作ってしまう。そう決めていました。

 さて、今年はその構造全体がほぼ完成。いよいよ施設本来の使命をスタートさせるというタイミング。言ってみればこれで長年の洪水の悩みが解消されますよという宣言の機会です。施設の形が龍のようでしたので完成したら「龍を描く」というのは決めていたのでそこはスンナリでしたが、誰が描くかが課題でした。

 でも寺門さんにお願いしようと決めるまでに実はそれほど時間はかかりませんでした。僕の基準は地底とか工事現場が似合わない人、夢が見にくい工事現場で平気で夢が見れる人でした。浮遊感漂うイルカとか天使の絵を描く人は絶対地底は似合わない、光りを描く人は暗闇をきっとおもしろがってくれるはず。ということで10年ぶりに寺門さんに電話を入れたのでした。

 思った通り薄暗い地底に立ってる寺門さんは痛々しいほど不釣合いでした。人間を無視する冷たい巨大なコンクリート空間にポツンと裸の男の子といった感じです。でもその少年はその柱の林立する暗闇の向う側から何かをズイズイ吸い取っていました。

 それから3ヶ月、日本の各地に龍を訪ねた寺門さんが三宅純さんの音と共に再びあの地底に降り立ちます。今度はその暗闇を味方にどんな光りを吐き出すのか、龍のような龍でないような誰も見た事のない色彩と音と躍動がそこに描き出されるはずです。ワクワクしますね。

 この日描かれた長さ10m龍の壁画は地上にできる展示館を飾ります。そしてその龍は施設の象徴であると同時に今後は市民の手で行われる新たな地底の祭りのイコンになります。僕はこの町に住む人たちの気持ちの中に、いつまでも寺門さんの龍が泳ぎ続けていてくれることを願っています。そして地底に洪水を飲み込む巨大な龍が住む土地として人々に記憶され続けたら、それは素敵だなあと思うのです。

 山名清隆


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