10年間の東京生活に終止符を打ち、コンピューターともお別れし、故郷・神戸へ戻った1993年。以来、僕は一心不乱に、シンプルにもう一度「絵」に向かい始めた。
「天使」や「イルカ」が絵に現れ始めて少し自信を取り戻しかけた頃、妻が突然、「光琳社に電話でもしてみたら?」と言うので、そのとおりしてみると、企画の担当の三枝さんという男が出て「そろそろ電話があるころだと思ってたんですよ」。
ぎょ!と思いつつ、その三枝さんと相談しながらみるみるまとまっていった僕の初めての作品集は、CGを集めた「ツル」の巻と、ペインティングを集めた「カメ」の巻の2巻本となった(このあたりのことは“奴凧”の三枝さんのコーナーに詳しいので、そちらへ)。どちらも、絵による短編小説集のような体裁で、僕が実際に見た夢の記録の文章を添えて10章立てとなっている。
この「カメ」には、セツ・モードセミナーの画学生だった頃の絵から、日本グラフィック展大賞受賞作のシリーズから、コンピューターとのコラボレーション時代を経て、再び神戸で描き始めた当時の最新作まで、おまけに僕の子供時代の絵(これが一番人気)までを網羅した内容で、現在のてらぴかワールドが発動しつつある瞬間を捉えた構成となっている。
造本・装丁には僕がかねてより敬愛していた鬼才・祖父江慎さんに思う存分遊んでいただき、著者近影もこれまた鬼才・沼田元氣さんに撮ってもらい、とっても「贅」「沢」。
現在絶版ですが、まだぽつんと書店にあったりするので、見つけたら即ゲット。そのうちほんとに入手不能になります。確実に。
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