周防さんとの出遭いは、突然の周防さんからの電話。なんでも、新宿紀伊国屋書店の芸術書コーナーで雑誌『デザインの現場』を立ち読み中、僕のCG作品が目に留まり、記載されていた電話番号を控えすぐさまかけてきてくれたのだそうだから、すごいアクティビティ。

 それがいつのことだったかが今正確に思い出せないのですが、僕は既に神戸に引っ越してきた後で、まだCG作品が雑誌に載っている頃だから、1993年か94年だと思う。で、その最初の電話で、僕の作品に感動して電話をかけてくれたこと、近々出すCDのジャケットに絵を描いて欲しいことを告げられました。

 そうして後日送られてきた彼の音楽を聴いて、今度は僕に電気が走る番でした。

 当時周防さんはBREW BREWという弦楽器がたくさん入ったユニットを結成していて既にCDも何枚か出していました。それがなんとも不思議なあじわいの音楽で。弦なのにロックで、なのになんか“わびさび”で、インストゥルメンタルかと思うとけっこう歌ががんがん入ってて、「神社はイイナ」とか「おいしいご飯食べたい〜」とか連呼したりしているのです。ナンダコレハ! 初めて聴くのに懐かしいようなおかしな感じ、奇妙な楽曲たち。デジャヴュ? デジャ耳?

 聴き進めるうちに映画『シコふんじゃった』の音楽とかが出てきて、義和氏が周防正行監督の従兄弟で正行監督の映画音楽をいつも担当していることが判明。さらにたくさんのCM音楽も担当していて、そうか、だからなんとなく耳馴染んでいたわけか、と納得。

 その後、僕が東京へ行ったときに代官山のボエームで初対面。不思議な風貌、絵になる風情。印象としてとんがった二等辺三角形。飄々として、語り出すとホット。笑顔はドライ。

 で、さっそくBREW BREWの新しいアルバムの絵を描かせていただくことになりました。絵はすぐに浮かびました。周防さんの音楽を聴くと、なぜか僕の目蓋の裏にはぼうぼうとどこまでもつづくみずみずしい水田の風景が浮かびます。風にそよぐイネ。なのでそのまま水田に舞い降りる音楽の天使のイメージで描きました。

 CDが出来あがった頃、僕は福岡・博多で翌年やる大規模な展覧会の計画を構想中。お祭り好きな僕は会場にステージを設け、そこでライヴペインティングをメインにショーというか、お楽しみ会のようなことをしたいと思い立ち、様様なジャンルの知人・友人に声をかけていたのですが、どうしても周防さんと彼のユニットBREW BREWにナマで演奏して欲しくなってしまったのでした。打診するとすぐにOK。

 が、それからが大変だったのです。そのイベントは1995年の2月の中旬に予定されていました。ご存知のように1月17日、阪神大震災がありましたが、関係各位の尽力により、イベントは予定通りに行われました。イベント前夜、出演者全員でリハーサル。夕方から翌朝8時までぶっとおしでした。そのまま午後2時に本番。夕方5時に2度目の本番。そして片付けたその足で貸切バスに飛び乗り熊本の温泉へ打ち上げ。そこでも夜通し語り合い、歌い合いの熱い夜。うまくここに書き切れないのが残念ですがそれはそれは伝説的なお祭りでした。

 ちなみに総合監督は白虎社を解散したばかりの大須賀勇氏、メインアクトは同じく白虎社の蛭田早苗さんの踊り、司会は俳優=池田成志さん、神戸からインド風巻物紙芝居師(ポトゥア)の東野健一氏もかけつけてくれ、僕の描いた大きな絵本をつかって「あたごの浦」という不思議なお話を語ってくれました。

 さらにはこのイベントのために即席に結成されたてらぴか・エンジェル・ドリーマーズなる女の子4人ぐみによるパフォーマンス、などなどなどが、地元の女の子達、男の子達も交え、周防さんたちの奏でる不思議な音楽に乗せて繰り広げられたのです。震災は乗り切れたけれどこのイベント後の数日は死んだように眠りつづけた僕でしたが、周防さんはそんな大変な現場もひょうひょうと愉しんでしまえるような、なんだか底知れぬところを持ち合わせているように思いました。

 その後、映画『Shall We Dance?』の音楽でアカデミー賞を受賞するなど大活躍で大忙しとなってしまいましたが、なにかと誘い合わせて会ったり、CDの絵を描かせてもらったり続いていたのですが、きわめつけはやはりPIG’S HEADの一件でしょう。

 1999年、9月4日、僕は盟友画家=木村タカヒロ君がプロデュースするライブハウス=SPACE62でPIG’S HEADの東京初公演をしたのですが、忙しいはずの周防さんの姿が客席に…。やばいなあ叱られるだろうなあと思いきや、終演後、「いやあ面白かった、僕もPIG’S HEADに入れてくんない?」!!!

 優しい大人の冗句だと思っていたら「さっそく曲が出来ました、練習しといてください」とか言って曲が送られてきたり、「CD作ろっか」と言って自宅を開放してレコーディングしてくれたり、挙句の果てには、自らそのCDを100枚も手焼きまでしてくれて、いったいこの人はどういう人なのだろう? とときどき恐ろしくもなるのですが、本人はいつもいたって飄々と愉しそうで、語るとホット、笑顔はドライなのです。

 昨秋には二人旅までしてしまい、奈良〜和歌山〜伊勢へ弥次喜多道中相成りました。二人で夕日を1時間くらい眺めたり、明け方「寺門さん、朝日がきれい」なんつっておこしてくれたり、けっこうDEEPなおっさん二人旅でした。

 さてPIG’S HEAD、11曲もレコーディング完了してるのに、今回の発売はは内4曲のみのパイロット盤なので、そのうちどこかからフルCD出したいなあと、二人の夢はまだまだ膨らみつづけるのです。うひひ。



CD「つぐみへ…」オリジナルサウンドトラック
周防義和(2000)
エイベックス ジャッケット


CD「つぐみへ…」オリジナルサウンドトラック
周防義和(2000)エイベックス
インナー見開き



CD「奇跡の人」オリジナルサウンドトラック
周防義和(1998)
ポリドール 裏ジャッケット



CD「DoReMiFa♯ポップがゆく」
BREW−BREW(1994)
日本コロムビア ジャッケット



CD「PIG'S HEAD/pilot」
PIG'S HEAD(2002)
terapca records 盤面



写真:PIG'S HEAD
レコーディング記念写真
(2001・7・21)


周防さんのホームページはこちらからどうぞ
周防義和 Official HomePage


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