▼ 結城座『注文の多い料理店』寺門孝之写し絵追加100枚新装版 黒部・北海道ツアー ▼
結城座「注文の多い料理店」のためのイメージ画(2006)
あれは2006年。御縁あって結城座から依頼を受け、糸あやつり人形結城座 宮沢賢治生誕110年記念公演『マジックランタン~注文の多い料理店』の写し絵師を仰せつかった。結城座とは江戸時代の旗揚げから今年で378年になる!!糸あやつり人形の劇団で、座長の結城孫三郎さんは十二代目に当たる。「写し絵」とは、結城座が江戸後期から伝える映像芸能で、「風呂」と呼ばれるスライド映写機のような装置に、「種板」と呼ばれる薄いガラス板にエナメル塗料で彩色した絵を差し入れ、それを薄膜に投影しながら劇をする。当時の僕にとっては全く未知の、新しい冒険だった。
台本・演出は山元清多さん。黒テントの作・演出家であり、「ムー一族」はじめ数々のテレビドラマや映画の脚本家・演出家としても大活躍の芸能世界の重鎮、皆から「ゲンさん」と呼ばれている。
結城座の写し絵は江戸末期から大正期あたりまでは寄席芸や舟遊びの出し物として大人気だったそうだが、関東大震災及び東京空襲により器材や資料が焼失、戦後はほとんど忘れ去られていたところを十二代目さんが中心となって古い資料などから風呂を再現し、光源を電燈にするなど現代に通用する強い映像芸として工夫を重ねて来た。この『マジックランタン~注文の多い料理店』が写し絵を大々的に取り上げる初めての試みということだった。なので演出の山元さんにとっても手探りの作業の積み重ねでたいへん御苦労されたことと想う。さらに出し物が宮沢賢治の「注文の多い料理店」という誰もが知っている大ネタで、賢治のお膝元岩手で初演というなかなかプレッシャーの大きい仕事だった。エナメル塗料の溶剤がトルエンだったか?(いやちがった、アセトンやった。)匂いもきつく作業を続けると強烈な酔いと頭痛を催したいへんだった。連日連夜絵付けをして150枚くらい描いた。
2006年制作の種板の一枚、山猫
それらが結城座の人形遣いの皆さんの手に係り、闇の中の幕に大きく映し出されると、その色の強さ妖しさにうっとりとなり、僕は「写し絵」に完全に魅了されてしまったのだった。そして、もちろん十二代目結城孫三郎さんはじめ結城座の皆さんの不思議なたたずまいと、魔術のような人形操りの技芸にくらくらした。通った結城座の稽古場の奥にずらりと吊り下がる数々の人形の醸す気配に冷やりともした。
制作中の注文の多い料理店の主人公二人の頭(2006年)
主人公の、山猫軒で散々な目に合う都会からやって来た二人の紳士の人形のデザインもさせていただいた。人形作家志望であった僕にとっては、極めて重要な経験となった。初演に立ち会うために訪れた岩手で、あちこちに連れて行ってくださり、黒テントのエピソードを沢山話してくださった山元さんの渋くカッコイイ横顔と銀色の人懐っこい瞳が忘れられない。
この出し物は二部構成となっており、僕は第二部の「注文の多い料理店」の写し絵と人形を担当したわけだが、このたび、第一部についても全面的に僕の絵にしたいと結城座さんから依頼を受け、再び100枚近くの写し絵を目下制作中、明日明後日で最後の仕上げをする段階だ。山元清多さんは、二年前に賢治側へ発ってしまわれたので、写し絵の映し方の流れや配置などについてもお手伝いさせていただいている。というか、そのときだけはゲンさんの依り代に成れたら、と思っている。
新しいバージョンでの第一部を含む『注文の多い料理店』は10月21日、富山県黒部市で初演、11月下旬に北海道3ヶ所を回ります。僕も黒部と、北海道の初回のみ、結城座にくっついて参ります。お近くの方、ぜひ御覧ください。結城座でしか観られない、美しく、妖しく、可笑しな宮沢賢治世界が繰り広げられます。
結城座富山北海道ツアー詳細は以下から
http://www.youkiza.jp/news/2012tour.html
結城座『注文の多い料理店』御案内映像が以下youtubeで御覧頂けます。
http://www.youtube.com/watch?v=SNRzuk-uito
結城座ホームページは以下から
http://www.youkiza.jp/
2006年12月、東京公演のチラシです。