▼ 6○4 クラブ月世界 中島ノブユキさんといけるところまで!! ▼
中島ノブユキさんと僕との関係は不思議なものだ。淫らといってもよいかもしれない。
普段は会わない。たまに神戸で、密やかに、けれど人前で。彼がピアノを鳴らし、僕が絵を描く。絵を描くといっても、フィルムのスクリーンを手やクレヨンやブラシで引っ掻き回すだけのようなものだ。打ち合わせは、無い。本当になくて、現場で会って、握手。「どうする?」「いかようにでも」「ではあとで」「本番で」・・・彼は街に消えて、本番まで現れない。僕だって画材を並べ終えると、どこかでチャージ。会場に戻ると、気が向けば、勝手に描き始める。
この夜は、前夜にアジトの前に落ちていた金色額装の鏡に、まずドローイングしつつ、中島氏の帰りを待った。なかなか現れない彼が、ようやくピアノに着くと、また去る。空調の音が気になったようだ。空調が切られ、静寂に最初の音が響くと、・・・もう止まらない止まらない。いつのまにか二人は、ばらばらに、そして緊密に、熱く静かに、暴れ、きづくと中島氏はもういない。すこしのインターバル。そして第二幕。絵の中の「ひとり」の中の「二人」がそれぞれに泣いていて、「一人」に戻りたくて見詰め合って喘いでいると起つ虹が「一人」「一人」に分かち、唐突に絵から僕は放り出される。ずっと金色の雨が降っている。金色の雨と虹、二人で一人で、一人一人な一人、そんな二人が絵の中で立ち尽くして、微笑していた。
終わってしまって、中島氏は街へ。僕も片付けて街に出て、もういちど中島氏と会ったものの、話すことが何も無い。仕方が無いから時間を酒や食べ物や人々で埋めて、ハグしてさようなら、ごきげんよう、またいつか、お会いしましょう。