« 週刊朝日8・19号 忘れられない一冊  | Today's Terapika トップ | 詩人の荒川洋治さんが »

2011年08月15日

▼ 盆 ▼


8月15日
青空にぱっくりと
透明な裂け目が開いて
霊達がおっかなびっくり
この代へ 透きとおる片足を
一歩 入れてみる

右翼団体のけたたましい
君が代も
今朝ばかりは百合の花々に
舞い囲まれて
清らかに 遠く 響く
音量が空気の濃さにさえぎられて何か小さくきこえるんだよなぁ
耳奥にプールの水が溜まって全て遠くにきこえるんだよなぁ

やっぱり敗けたんだな
50年余のタイムトンネルの
まぼろしも今は薄く
僕にでさえ身にしみる
敗戦記念日

それがちょうど盆の中日なんて

国民は心底
霊を信じているんだろうな

(それがちょうど1月7日だなんて)
(それがちょうど1月17日だなんて)

信じてることも忘れてるんだろうなぁ

街は人があふれているのに
そのざわめきは
空にぱっくり裂けた
透明な裂け目にすいこまれて
何かどんよりとしづかで
いつもとおんなじようでいて
どこかちがう

停止したエスカレーターのステップに
ふみ入れるがごとし

この代に霊があふれ出してるんだもんなぁ

閉ぢたラーメン屋の店先で
紙くづの吹きだまりが
渦を巻いて 立ち上がろうか どうしようかと
散るに 散れず

僕のうちは炊かないし
この代に何軒
送り火を炊く家があるのかな

毎年どんどんこの代に霊が
濃くなって
空の裂け目も縫いつくろわれることもなく
ただ だらしなく
今年も盆を通り過ぎる


********
もう10年以上前の盆に書き留めた詩ですが・・・
今年もまたこれで・・・

トラックバックURL

▼ このエントリーのトラックバックURL:
http://www.terapika.com/files/blog_files/mt-tb.cgi/569

コメントする

(コメントはウェブマスターの承認後に公開されます。承認されるまでコメントは表示されませんので、しばらくお待ち下さい。)