▼ 人魚姫としての渡辺えり像 ▼
ミュージァムに立ち寄った後、渡辺えりさんのリサイタル“My Room”をみせて頂きにスパイラルホールへ。暗転~激しいドラミングとともにすぐに凄い衣装のえりさん登場! ジュリー「ストリッパー」で幕開け。御揃い衣装の明星真由美さんを迎えてピンクレディ「UFO」、井上陽水「東へ西へ」など僕の世代には嬉しい楽曲が繰り出される。後半も、ニルソン「Without You」、ロバータ・フラック「やさしく歌って」、キャロル・キング「You've Got A Friend」、エリック・カルメン「All By Myself」など僕も大好きな歌を次々とオリジナルの訳詩で歌ってくれた。
ベッド・ミドラーの「Rose」を歌ってもらいながら、ふっと僕が20代前半だった頃、芝居小屋で光り輝いていた役者のことを思い出した。その後すぐにバイク事故で亡くなってしまったその人は映画「Rose」が大好きだったと聞いた。話したことはなかったが僕にとってすぐ近い場所にいたその人を通して、僕は自分の世代の来るべき新しい時代をみていた、一時があった。四半世紀が過ぎて、渡辺えりさんの強く響く声の近くに、すぐ近くにその人の気配と、その人がいた時間が寄り添っているように感じた。
ちょうど一年前みせて頂いた劇「りぼん」の後の席で渡辺えりさんは御自身の芝居について「死者のために作っている、死者とともに作っている」とはっきりとおっしゃっていた。今日のリサイタルも、明るく華やかで、なごやかな進行の中、特に後半に選ばれたアメリカの楽曲のいくつかはここにいない人へ向けられた思いの歌だった。
いない人がいる、いないはずの人と出くわす、
えりさんの芝居にはいつもそんな場面があり、「えっ」と声を上げそうになるがその「えっ」は、いつも言うように僕にとっての「絵」と同じものだ。だから渡辺えりさんの世界は僕にとっていつも懐かしく、あたたかく、おそろしい。
写真は、一年前に約束しながらずっと果たせないままだった昨年秋のえりさん作・演出の結城座公演「森の中の海」に登場したえりさん似の人魚を発展させた人魚姫としての渡辺えり像。ようやく完成し、今日のステージ後にお渡しすることがかないました。安堵。