▼ 光の中のお婆さん ▼
僕は江原啓之さんを含むかなりの多人数で日本旅館のようなところへ泊まりに来ている。佐藤B作さんも来ていて江原さんとなんだかボケとツッコミみたいに面白い会話をしていた(内容もよく覚えているのだが、これはしゃべりでないと伝わらないなぁ)。僕は江原さんとやや左斜めに対面しているような位置で、江原さんが「寺門さん、今ね、そこに」と言いかけるのを僕は遮って「待って! ちょっと待って、見えてます見えてます!」
僕の右斜め前方の宙空にまあるい窓のように、春の穏やかな海の水面が陽光を細かく反射しているような光の粒がきらきらきらきらと光るのが見え、その中に薄鼠色の着物を着た銀髪のお婆さんが正座して真正面を向いて僕を見ている、のがくっきりと見えている。お婆さんはちょっとはにかんだような微笑をして、両手をひざの前について僕にお辞儀をするように少し頭を垂れた。こんなにはっきり見えるのか…江原さんはいつもこんな風に見えてるんだなぁ~などと思っていた。
「寺門さん、見える? その人はねぇ……」江原さんはその人が僕にとってどういう人だか、なにか言ってくれているようだったが、僕はまばゆい光の中の、上品な薄い影のようなお婆さんが見えていることにすっかり気を取られて、話しを聞きそびれてしまった。やがてゆっくりと光の粒の円窓は薄れ、お婆さんは見えなくなった。そして目覚めた。垂水の実家に泊まった1月20日の朝の夢。
そとは冷たい雨が降り始め、僕は大学業務の一環で初めてセンター試験の試験監督をした。受験生に負けないくらい、緊張。