Today's Terapika寺門孝之です。

Back Number 20040524

 

 2ΘΘ4年5月24日、月曜、好天。強い光に涼しい風がアトリエを吹き抜ける。

 先週末より2泊3日で東京〜横浜〜鎌倉を巡り、それぞれ色濃い体験の詰まった時を過ごし昨夜帰神。その余韻に今日は終日ぼんやり、黒を塗る。以下にその旅の記憶を記します。

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 昨日23日は朝からいくつか目的があっていざ鎌倉へ、そこで恐ろしい目に合ったのでそれについてまず。

 今回の目的のひとつは鎌倉のガイドブックの地図にみつけたXXXという名の神社を訪ねることだった。

 中沢新一著『聖霊の王』で、シャグジ、ミシャグジ、シャクジン、シュクジン、シュクノカミ、シクジノカミなどの名で呼ばれる聖霊に対する信仰が日本列島にまだ国家も神社もなく神々の体系も存在しなかった時代からあり、日本という国家が誕生するとそれらは闇に葬られ、それが芸能や技術の創造を司る神として一部の人の間で血脈を保っている、という内容を読み、XXXという名がまさしくその読みに当たっていたので行って確かめてみたかった。

 地図をたどって行くと案外と簡単にXXX堂という立て札に辿り着く。それは立派な寺院の参道と並行して上る細い階段を示しているようだったので上ると、寺院の方へ着いてしまった。

 おかしいなと思い引き返してもう一度上りながらよく見ると木々の向こうに道無き道がありそうでそれを辿るとさっきは見えなかった細い階段が現れた。上がるとお堂が見えた。

 その時、バサバサバサ!!!と大きなカラスが頭のすぐのところを横切り、危うくぶつかるところだった。それでも前へ進もうとするともう一羽別のカラスと今のカラスが僕を前後に挟み込むように低空飛行してきた。

 最初は何か食べ物を狙っているのかと思い手荷物を確認したがそれらしいものは持っていない。お堂はあと10歩も進めば拝めそうな距離だったのでなんとか進みたいのだが、カラスが樹上から睨んでいる。辺りには誰一人姿は見えず、お堂の背後にはうっそうとした森の闇。カラスばかりでなくたくさんの鋭い視線に晒されているような気がした。

 いったいここは何処なのか? 恐怖心と好奇心が昂ぶる。

 意を決して前へ一歩踏み出した途端、ブウンと羽音を唸らせて2羽のカラスが同時に僕の頭めがけ飛びかかって来た! カツンと嘴で後頭部の左を突かれる。明らかな殺気! ひゃ〜ごめんなさいごめんなさい〜とココロの中で謝りながら僕は頭をかばって踵をかえし階段を駆け下りた。脂汗。「今生では二度とここへ立ち入らない」と誓いつつ退散。

 2羽のカラスはその場所を警護し、決して部外者を入れないという明確な意思を持っていたと思う。眼鏡を掛けていて本当に良かったと思う。

 その後、気分を取り直そうと普通の感じの神社へ入ってみる。拝殿に近づくと樹上でガサリとモノノケが動く。げっ、またですか?とひるむ。音の場所に目を凝らすとリスが現れた。ほっとして賽銭を投げる。

 そこの祭神はスサノオノミコト、イナダヒメノミコト、八王子命と、佐竹氏の霊とあった。かつて祖父に聞くところによると寺門という一族は佐竹氏と縁が深かったということなので因縁を感じる。その後もいくつか神社を巡って歩いたがところどころでカラスの視線を感じ、また威嚇するように接近してくることもありびびる。(つづく)

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