Today's Terapika寺門孝之です。

Back Number 20040113

 

 2∞4年1月13日、火曜、晴れ。寒くて風が強くて道に看板とかダンボール箱とかが舞っている。

 午前中アトリエでお絵描き。

 午後、所用あって垂水区の実家へ。久し振りに垂水駅に降り、「雨とじゅじゅ」のお好み焼き屋さん=じゅじゅへ行こうとするが思った所に見当たらず断念。

 仕方なく散策中に見つけたお好み焼きとつぼ焼きの赤提灯の店に入ると席数3つの素晴らしく狭くDEEPな店。おばちゃんは上品で美人。つぼ焼きもモダン焼きもとても美味しく価格も安くゴージャスな気分で寒い風が吹き荒れる垂水の町を散策しながら実家へ。

 子供時代に慣れ親しんだ界隈を歩き回ったり、慣れ親しんだ物品を再び手に持って眺めたりすることによって魔法的な気分を味わうのが僕は好き。ある場所は本当に時の流れがストップしたかの如くそのままそこにあり、ある場所は残酷なくらい跡形もなく、地形ごと削り取られている。

 通っていた小学校を中心に毎日少しずつ探検しながら広がっていた僕の世界は、今歩くとなんて狭い一画だったのだろう。けれどもそれは僕が身体が大きくなったせいではなく、その頃の感覚がどれだけ精妙で豊かであって、今の僕がどれだけ鈍覚になっているか、という悲しい証拠だ。

 友達の家への近道だった路地をいくつか通ってみる。建ち換わった建物の周囲を巡ってみる。(かなり不審人物)。歩きながら、失ったものが押し寄せてくる。 

 坂を上ると、ぽーんと視界が開いて、水銀のようにぎらんと光る海に淡路島のシルエット、その上に割れたガラスをぶちまけたような光が鋭くあっちこっちに突き刺さっているのが見えた。

 実家での用を終えアトリエに帰りF100のカンバス3枚目に黒を塗る。

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