久し振りに「絵」について書きます。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』のパンフレットに載ってるインタビューでジョニー・デップはこんなことを言ってます。
「役作りの楽しさは、何段ものレイヤー(層)が入れられることだと思う。自分なりに調べ、考えついた(その役についての)情報を何段にも積み重ねることによって、初めて独特の味が出てくる。」
この「レイヤー」という言葉を読んだ時、パチン!と僕の中で回路が繋がりました。なるほど、彼の演じる役柄がいつも極めてユニークなニュアンスを醸しながら、クールで透明感を感じさせるものになっている秘密はこの「レイヤー」の感覚だったのか。
「レイヤー」はコンピューターで画像を作ったことがある人にはおなじみの言葉で、ひとつの絵を作るのに、それを透明な何枚もの層(レイヤー)を積み重ねながら作業を進めるのです。
僕は今はコンピューターを使わず、絵の具で絵を描いていますが、最近の「闇の妹」シリーズなどの行程は、かなりコンピューターでかつて絵を作っていたときの段取りに近いものがあると感じていました。まさしく「レイヤー」の積み重ねによって絵とそのニュアンスは成り立っているのです。
「闇の妹」シリーズではとにかく「闇」が主人公でもあるので、カンバスに黒い絵の具を何十回と塗り重ねていきます。黒と黒の間に、他の色の層をはさむことも多々あります。
そうして気に入った状態に下塗りが出来上がってきたら、今度は「木」を出現させるために、一旦全面に金を塗ります。そうして木を切り抜くようにしてまた背景を黒く塗り重ねていきます。木が闇にうまく馴染んで登場したら初めて、闇の妹など、登場人物に取り掛かるのです。
この下地塗りがあんまり時間がかかるので、試しに助手にお願いしたことがあるのですが、結局その後自分の感じが出てくるまでかなり塗り重ねなくてはなりませんでした。黒を塗り重ねるだけなのですが、自分で塗らないとその後、その上に色を載せた時の反応が違ってしまうのです。
これ、どうしてかな〜??、やっぱり「気」とかそういうことか?、とか思っていましたが、なんのことはない、「レイヤー」のせいだったわけですね。
黒だと、塗り重ねると下の層が見えなくなってしまうのですが、もしこれが透明な色でできたレイヤーだったら最初の層から順に全ての層が重なって最後の絵が出来ていくので、他の人が描いた層があれば違和感が出るのは当たり前。もし助手に任せるなら、筆致とか速度とか、瞬間的な判断の全てをを僕に合わせなくてはならなくなります。
そのことに気付いたので、今試しているのは、全てのレイヤーが透けて見えていくような絵。たぶん「白」を基調とした絵になると思います。これは膠だけ塗ったカンバス地に最初に塗っていく白の層から初めて、「闇」とおんなじ程度まで質感が出てくるように白を塗っていくのですが、白と白の間に鮮やかな色でドローイングをはさみこみながら重ねていきます。
僕の狙いとしては、きっと、「闇の妹」シリーズと同じくらいの重さ・奥行きのある「白い光」の背景が出てくるはずです。抽象画としても成立するくらい意識的に筆を進めていくような遊び方です。そこへ登場人物などを最後に載せる。こんな感じで、12月の“holy snow”に向けて、筆を進めていっているところです。どうなりますことやら?
2∞3年1●月4日、晴れ。終日お絵描き。途中、神戸ファッション専門学校のファッションショー見学。
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