3日ほど前のこと。いつものように街からアトリエへ戻る坂の途中の赤信号を待っている時でした。
ふっと、左背後にプラチナ光、雪景色のような気配を感じて思わずちらと振り返ると、白い雪のようなやわらかそうなハーフコートに白く発光するかんばせを載せた女性。
ぢっと振り返るのもなんやし、一歩、二歩、後退(これも不自然やけど)。斜め後ろからその斜め後ろ顔を観察するに、長い眉、透明な清流のような目玉の半球、その上下に幾何学的に放射している睫毛、三角定規ののように鋭角的で華奢な鼻の稜線、そのわりには円くなだらかな頬の膨らみ、その白く光る肌色から淡く色彩めく口元、白いコートの上にうずたかく盛られた真っ黒な髪のボリューム、などなどが一瞬のうちに見て取られ、美・美・美! あわわ、ひさしぶりにアジアの天使と遭遇や、と興奮。
やがて信号は青へ換わり、いつまでも後ろをついていくわけにもいかないので、自分の歩速で白天使を追い抜いてどんどん先を歩むものの、う〜む、もう一度見たいなあ、とちょっと振り向いたら、そこに白いコートの女性はいたものの、コートの上にの載る顔はさっきの印象とは全く違う顔になっていました。
はてさて…あれは僕の幻想だったのかな? でも今も明確にその顔の様子は思い浮かべられ、きっと絵に現われそう。
思えば、神戸に戻ってきて天使を描き始めたころにはよく、この街でそんな一瞬の天使を見かけたものです。電車の座席の斜め向かいとか、バスの車窓からとか、横断歩道の渡り際とか、色色な一瞬に。
今、東京展の準備で、ひさしぶりに天使の新作を描き始めているのですが、白天使との遭遇で俄然、筆の走り、色の展開が調子付いて来ました。
2002年11月11日、月曜、晴れ。いい日付ですな。
そうそう今日から木村タカヒロ君、自分のホームぺ−ジを毎日更新すると言ってましたけど、ホントに始まってるかなあ、これから覗いてみよっと。
寺門孝之
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