2002年4月19日、金曜、爽やかにハレバレと。
今日は皆様に重大なお知らせです。僕、地下へ潜ることになりました。
といっても、やばいコトに関わって姿をくらますわけでも、過激思想を胸に抱いて秘密の活動を始めるわけでもありません。比喩ではなく、本当に地下へ潜ります。地下、っていうか、地底へ潜って、「竜」を描くのです。
その場所は埼玉県北葛城郡庄和町にあります。その辺りはお皿のような地形で中川、大落古利根川、元荒川、綾瀬川とたくさんの川が走り、その周囲を取り囲むように利根川、江戸川、荒川といった大河川が流れていて、大雨になるととたんに浸水してしまう水害多発地域です。(聞くところによれば、ですが。)
で、その水害を防ぐために各河川の水量が増したときに、その水を地下の人工川へ流し、江戸川へ放出するという壮大な治水施設(首都圏外郭放水路というそうです)の工事が10年にわたり行われておりいよいよそれが完成します。
で、その「通水記念」市民イベントとして、庄和町の地底に誕生した巨大な貯水槽の空間にステージを設けて、ライヴで、その施設のシンボルとなるよう「竜」を描く、という国のプロジェクトとしては随分と粋なことを思いついた人がいて、その方から僕に、「地底への招待状」が届いたのです。
それが、伊勢丹展の準備でらりらりしていた2月の後半。このプロジェクトのプロデューサーである山名清隆氏から「寺門さんおひさしぶり! 地底へ行きませんか?」といきなり電話をもらい、コトのあまりの突飛さに、「あ、行きます行きます」と応えてしまい、忙しい最中、3月8日にその地底へ連れて行ってもらいました。
びっくりしました。でかい。ふかい。くらい。ちょっと足がすくみました。しばらくして目が闇に馴染んでくると遠くから漏れてくる薄い外光に、とんでもない大きさのコンクリートの柱がにょきにょきと浮かび上がってきました。
この日の話ではこの柱のどれかに絵を描く、ということでした。その後、『夢見る力』展をはさんで、どこにどのように「竜」を描くのか、ずっと相談をつづけていたのでしたが、結局、昨日、「記念イベント当日、ライヴで描く」という最も過激な案に決定したのです。現実面の考慮から柱に描くのではなく、ステージを設け、巨大なカンバスに描くことになりました。
そしてなんと、畏友=三宅純さんとのコラボレーションです(予定)。三宅純VS寺門孝之。彼のトランペットやフェンダーローズの響きの中で、地底の特設アトリエで、果たしてどんな「竜」が生まれるのか? その日は、2002年6月8日、土曜。午前11時から午後3時の4時間の間に全てが起こるように、タイマーはセットされたところです。
僕のアタマとココロは今、「竜」のことでいっぱいです。また続報します。
寺門孝之
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