ハサミ
焼く前の餃子の匂いが静かに垂れこめる横道をくぐりぬけ
ぼたん雪が上からも下からも湧きおこる水玉模様の鯉川筋の赤信号を
赤い傘をひらいてぢっと待っていると、
雪の中で僕の名前が呼ばれた。
ふりむくと雪の模様のショコラとケンドールさんの切り抜き笑顔が2つ
こけしのように立っていて、白い詞を吐いていた。
3人は、赤い傘をかかげて、青信号を横断し終えると、
2つの笑顔と僕の間を、大きなハサミがヂョギヂョギヂョギと切り離し
僕はまたひとり、雪の玉模様の灰色の街を、
古書の中で筒井康隆が案内するトーアロードのだらだら坂を
右膝を曲げずにのろのろ上ってく。
街を埋めるぼたん雪の模様を、大きなハサミがヂョギヂョギ切り裂くと
まあたらしい氷のような光が刺してきて
旅先の少女は4つ辻でまぶしそうに道を失っていた。
ハロウ! キャナイヘルプユ?
大きなハサミはヂョギヂョギと僕を少女から切り抜いて
僕はひとり、アトリエの階段を上る。
右膝を曲げずに僕は、
大きなハサミでヂョギヂョギと切り抜かれて、
空に属していた。
今日は・・・
2001年3月9日、金曜、雪。
from terapika
|