Today's Terapika寺門孝之です。

Back Number 20001128

 

 2000年11月28日、火曜、晴れ。気持ち良く冷気。

 今日はお昼に、県立近代美術館へ『マティス、その原点』展へ。がら空きで、ゆうっくりと観ることができました。

 マティスというと南仏のイメージが強いのですが、生まれ育ったのはフランスでも最も北の方の町だったそうで、この展覧会はその生まれ故郷の町のマティス美術館所蔵作品を並べたもの。マティスというとぱっと思い浮かべる色鮮やかな絵を描く以前の初期の絵もたくさんあって興味深い展示でした。

 で、感想を言うと、マティス、南仏に行ってほんとうにヨカッタ。もしもずっとこの街にいて、あるいはパリに出ただけだったら、ここに並んでる絵のほとんどは後世に残らなかっただろうな。特にかわりばえしない陰鬱な西洋の絵って感じ。

 それが、仲間のドランなんかと南仏のコリウールっていう漁港へ出かけて行って、突然、色、が炸裂。そこからフォーヴィズムと呼ばれることになる一連の絵が生まれ、後年のニースへの移住によって、光の画家として確実に仕事を進めるようになっていく。

 初期の絵や、パリでのの絵、それから南仏での絵でさえも、ここに並んでる絵たちを見て思うのは、マティスって、絵、上手くない。かなり下手かも。ライバル=ピカソのあの少年時のデッサンや油彩と比べちゃうと、もう比較にならないくらいへんちくりんなデッサンや油彩を描いている。不思議・・・。

 で、ときどき、いわゆるマティス風の、わわ、って思う凄い傑作を生み出すけれど、その後またへんてこな中途半端な絵をえんえん描いたりしてる。不思議な画家だ。たぶん、「影」の扱いが下手というか、どうしていいかわからなかったのかな。逆に言うと「光」についての感受性が突飛なほどに強かったのかも。だから影をベースに光を描くルネサンス後期以降の西洋画の伝統からは外れて、下手に見えるのかも。

 けれど、いわゆる絵上手ぢゃなかったからこそ、後年、あんな凄い絵をものにすることができたのかなあ? こつこつ描きながら、マティスは何を狙ってたんだろう? 何に向かってたんだろう?

 確かにマティスは、ナニカがわかっていたんだろうな。誰も描いた事がなかった絵について…。色と色の関係について…。面積について…。空間について…。街とアトリエの関係について…。線について…。だんだんとそれらは、「絵」となって僕達が目で見ることが出きるものになっていき、最後の最後には、ヴァンスの礼拝堂、に完結してく。画家の、素晴らしい人生!

 from terapika

 

「天使からのおくりもの」

凰宮天恵/著  寺門孝之/絵

大和書房 本体1100円+税

 

僕が看板・壁画など描いた店が
12月3日オープンしました。

Cafe Hahn Hof(カフェ ハーンホフ)

神戸市中央区明石町32
tel :078−321−0415
(元町・大丸の南、フェラガモとか入ってる明海ビルの地下1階)

 

Days of Angels
天使のカレンダー

絵*寺門孝之 / 文*三枝克之

リトル・モア  ¥1500+税

全国書店にて絶賛発売中!

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