Today's Terapika寺門孝之です。

Back Number 20000521

 
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寺門さんが旅行中なので、deepsea(GwG)が
このコーナーを担当します(不定期更新)。

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 2000年5月21日、日曜日、晴れ、三宮は人出多し。

 皆さん、音楽、聴いてらっしゃいますか? 音楽って良いですよね。ボクはダイスキです。音楽を全く聴かない日なんてないほどです。ホントに(氾濫気味ではと思えるほど)たくさんの、様々な音楽が、日々ボク達の耳に飛び込んできます。なぜなら、今日では、CDやラジオや有線(そして近年ではインターネットも)といったような音楽を配信するための各種メディアが、日常的にボク達の生活を取り巻いているからです。ボク達が耳にする音楽は、年々その量を増しているのかもしれません。でも、にもかかわらず、ボク達の心を打ち震わすような音楽の出現頻度は、とても増加しているとは、少なくともボクには思えないのです。いや、もしかしたら、むしろ減っているのかも…。

 素晴らしい音楽というものは、確実に存在します。言うまでもないことです。しかし、ラジオや有線から流れてくる音楽達の中に、一体どれだけの「本物の音楽」が含まれていると言えるでしょう? 一体どれだけの「切実な音楽」が含まれていると言えるでしょう? 残念ながら、胸を張って「これぞ」と言えるような音楽は、少数派であると断言せざるを得ません。

 しかし、繰り返しになりますが、「本物の音楽」は実際的に存在しうるのです。そして、その「本物度」は相対的なものなどではなく、間違い無く絶対的な値を持った基準であると、これまた敢えて断言しておきましょう。そう、「本物の音楽」とは絶対的な枠組なのです。

 事態を混乱させているのは、「本物の音楽」の対極が「偽物の音楽」では“ない”ということです。「本物の音楽」と対を成すものは、単に「本物ではない音楽」です。そして、その両方ともが「音楽」なのです。「音楽」はどの音楽もすべからく「音楽」であり、そこには本質的に「偽物」が存在する余地は無く、世界は「本物の音楽」と「本物ではない音楽」に占められています。

 もし仮に「本物の音楽」の対が「偽物の音楽」であるとするならば、いわゆるミュージックシーンというものに対して、ボク達はもっと楽観的かつ短絡的な態度を取ることが出来るでしょう。偽物には「偽物」のレッテルを貼り、シーンから排除することが出来るからです。その後には「本物の音楽」だけが残るでしょう。つまり、「偽物」は「音楽」ではないという立場です。しかし、現実問題として、「本物の音楽」の対が「本物ではない音楽」である以上、ボク達は全ての音楽を「音楽」として認め、なおかつ両者の拮抗状態と共存状態を甘んじて受け入れなくてはなりません。混沌としたJ−POPヒットチャートですら、(それが正に働くか負に働くかは別にして)シーンの一翼を担う役割を持っています。混交玉石。事態は複雑になるばかりです。

 話が少々脱線しました。本題。今日は、ボクが最近聴いた「本物の音楽」について書きたいと思います。

 寺門さんのご親友であり、当サイトの“奴凧”でも紹介されている、音楽家の三宅純さん。ボクはCD「angels rond」で初めて三宅さんの音楽に触れ、1999年に東京・青山で行われたLIVE「Salon de EXOTICA」で初めて三宅さんの生の音に遭遇しました。

 でも、実はボクの三宅さん体験はこの二つだけで、「angels rond」が三宅さんと寺門さんとのコラボレーションであったことや、東京でのLIVEでは、ボクがLIVE会場独特の雰囲気に飲まれてしまったこともあって、三宅さん自身への印象という点では、その焦点が少しぼやけてしまっているような感がありました。

 以後、三宅さんの音楽に触れることはなかなか無かったのですが、先日、偶然にも三宅さんのCD「Glam Exotica!=JUN MIYAKE」(BEAMSより発売中)を自宅のオーディオの前にデンと座って、じっくり聴く機会に恵まれたのです。

 ここでボクが、このCDについての感想をツラツラクドクドと書き付けることは避けたいと思います。是非皆さんに先入観無くこのCDを聴いていただきたいからです。きっと十人十色の感想があることでしょう。好き、嫌い、上手い、下手、素敵、おいしい、カッコイイ、etc…。しかし、間違えなく言えることは、このCDに封じ込められている音楽達は、絶対的に「本物の音楽」だということです。「本物の音楽」が厳然とそびえ立つようにして存在しているのです。このCDは「本物の音楽」の一つの到達点を具体的な形で示してくれている、とも言えるでしょう。また、逆説的に言えば、「本物の音楽」とはここまで具体的な形を取ることが出来るのです。そして、その具体性が、絶対的な枠組としての、妥協のない、贅沢で、精緻な、肩肘の張らない、けどピアノ線のような緊張感を伴った、「本物の音楽」を紡ぎ上げるのです。

 冒頭でも書きましたが、ボク達の身の周りにはホントにたくさんの音楽が潜んでいます。その中には素晴らしい「本物の音楽」が数多く存在しています。でも、それ以上に(ボクにしてみれば耳を覆いたくなってしまうような)「本物ではない音楽」もまた、数多く存在するのです。細かいことは気にせずに、どんな音楽でも聞き流してしまえば良いのかもしれません。「本物ではない音楽」を拒絶する必要はないのかもしれません。でも、砂礫の山に埋もれてしまったキラキラ輝く宝石のような「本物の音楽」を、自らの選択によって意識的に聴くことは、音楽に対して心から贅沢な行為であり、その行為は芸術的な栄養素と官能的な豊饒を、ボク達の心に届けてくれます。ボクはいつも、このような贅沢かつ官能的な感覚が、もっと一般的なものになって欲しいと願っています。

 皆さん! たくさん「本物の音楽」を聴きましょう! 進んで「本物の音楽」に触れましょう! 何を聴けば良いか分からないという方は、手始めに「Glam Exotica!=JUN MIYAKE」、お勧めです。一つ「本物の音楽」を知ると、後は簡単です。音楽の方から、自分が「本物の音楽」かどうかを教えてくれるようになります。そうなれば占めたものですよね。

 ではでは、長文、お付き合いくださって、ありがとうございました。今日も多くの人達が「本物の音楽」に出会えますように。ナムナム。

 

「天使からのおくりもの」

凰宮天恵/著  寺門孝之/絵

大和書房 本体1100円+税

 

僕が看板・壁画など描いた店が
12月3日オープンしました。

Cafe Hahn Hof(カフェ ハーンホフ)

神戸市中央区明石町32
tel :078−321−0415
(元町・大丸の南、フェラガモとか入ってる明海ビルの地下1階)

 

Days of Angels
天使のカレンダー

絵*寺門孝之 / 文*三枝克之

リトル・モア  ¥1500+税

全国書店にて絶賛発売中!

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