2000年4月5日、水曜、小雨のち薄晴れ。
ずっと僕は展覧会の準備でアトリエで絵を描いてばっかりいて、あんまり世間様でどんなことになってるのか、まあ、気にもとめてなかったんですが、準備も一段落ついて、さあ、世間様は? とココロのドアを開けてみりゃ、ありゃありゃ、大変なことになってるぢゃありませんか。火山は噴火するは、首相は倒れてるは(宮崎学氏のホームページによると、もう死んでるらしい)、いつのまにか森とかいう人がわが国代表になってるは、油断ならない状況です。
しかし、火山って物凄い。温泉は本当に気持ちがいいけど、考えて見るとこれだけどこでも湯が湧くってことは、マグマがそこかしこを走ってるってことで、火山列島、オソルベシです。ここも、有馬温泉近いし、六甲山、噴火なんてことないでしょうか、心配です。
三枝さんが茶室で「神話」についてお話されていましたが、神話だとか伝説とか古くから伝わる物語には、大自然に対して、人がおりあいをつけてしのいでいけるための知恵とか禁忌とかが込められているのでしょう。今、僕達はそうした伝承の知恵を得る機会からほとんど遠ざけられており、科学に頼るほかないようですが、実は、やっぱり今でも、この世界をこっそり支えているのは、ふるくから伝わるナニカを守りつづけている人だったりするのかもしれません。
例えば、アパートからアトリエへ行く道の途中にお不動さんがあって、大きな岩が祭られています。とても小さな場所で、いつも薄暗く、人の気配もあまりしないのですが、毎日ろうそくの火が絶やされず、しっかりと祭りつづけてる方がいるのがわかります。で、先の震災の際、僕はアトリエ周辺を歩き回ったのですが、このお不動さんを堺に、それより北は、圧倒的に被害が少ないように見うけられました。不動、とはそういう具体的なことだったのか、とまた勝手に感心したりしたものでした。
また、布引の滝へよく行くのですが、いつもその辺りの山道ですれ違う複数のご老人方がいます。噂によると、彼らが毎日、山歩きをすることで、結界を作って山を守っているということです。
僕には、何をどうしたらよいのか、皆目わからないのですが、出来ればそうした感受性を敏感にして、せめて、禁忌に触れないよう暮らしていけるといいのですが・・・
耳そぎ饅頭
町田 康 ;著
マガジンハウス 定価:本体1500円(税別)
“
baby oil magic ”
場所 : 美術画廊ギャルリ・ムスタシュ(大阪・心斎橋)
日程 : 2000年4月7日〜2000年5月7日
(詳しくは、“てんらんかい”の“NEXT”でご覧下さい)
|