Back Number 20000106

 

 2000年、1月6日、木曜、妙に蒸し暑いと思ったら雨降ってきました。

 さて、一昨日から着手した2000年の描き染め「angels on the dragon」、完成しました。まずまずの出来です。お楽しみに。

昨日、日本グラフィック展のことに触れたので、今日は大賞受賞に関するエピソードを書きます。奇妙なことを言うようですが、実は夢のお告げがあったのです。

 

 イラストレーターになりたくて上京し、セツで絵を学びながら、何回か小さな公募展、やイラストレーション誌のチョイスなどに応募してみたものの、箸にも棒にもかからなくて、(今思えば応募する度にふらふら画風もかわっててまだ絵のキモが座ってなかったので落選して当然だったけど)、もう公募展は出してもムダだとあきらめてしまっていました。

 セツでの絵はようやく自分が描きたい方向が見えてきてすこしだけ光の差してくる方角がわかりかけてきたというところ。1985年の6月のある日、こんな夢を見て目覚めました。

 

 暗くて広い洞窟かガレージのようなところへ僕は入って行く。中には白熱灯がキラキラ輝いていて、たくさんの人々がいる。僕が近づいていくと、彼等彼女等がいっせいに僕を振り向いて、おめでとう! ブラボー!と口々に叫びながら、大拍手で迎えてくれる。

 傍らに目を向けると、B全大の白い木のフレームが3枚、重ねて立てかけてあった。

 

 僕は嬉しさと晴れがましさに満たされて目を覚ましました。

 その夕、仕事を終えてセツへ行くとすぐに友人が、日本グラフィック展の応募用紙を持ってきて、「寺門君、これ出す? 俺出そうかなあ」と言う。もう公募展にすっかり関心を失っていた僕はいつもなら断るはずなのに、なんか出してみる気持ちになって、その夜から描き始めました。締め切りまではあと6日しかなかったのです。

4畳半の部屋の真中に新聞紙を敷いて、B全のマーメイド紙にセツで最近自信をつけてきた水着の女達の群像を一心不乱に描きました。

以後、毎日、仕事から寄り道せず部屋に戻り、布団も敷かず、ただただ夢の感触を思い出しながら、とにかく描きました。「絵に死んでもイイ」、と初めて思ったのはその時です。何の絵を描いているのか、自分でもよくわかりませんでしたが、とにかく3点描き終わり、急いで額装することにしました。夢で見た額を細部まで鮮明に覚えており、また、その額を以前散歩中に浜田山駅の近くの額縁屋で見たことがあるのを覚えていたのです。

 僕はその店へ行きました。でも、目当ての額は既に店頭にありませんでした。主人に訊ねると、もう売れてしまったけれど、新しく作ってくれると言います。高い買い物でしたが、僕はなんか嬉しくて、すかさず注文しました。そうして無理を言って締め切り前日に額を仕上げてもらって、自分で額装し、翌日の搬入日を迎えました。日曜日でした。早朝、素晴らしい晴天でした。

 僕は3点の絵を抱え、大きな気持ちでタクシーを拾い、指定の搬入場所へ駆けつけました。まだ時刻が早かったせいか、待たされることもなく受け付けをしてもらえたのですが、なんとそこはパルコ・PART3の地下駐車場で、夢で見たのとそっくりおんなじの場所だったのです。

 僕は、既に闇雲に確信していました。会社の同僚やセツの仲間たちに、「僕は大賞を取るような気がする」と言ってはばからず、呆れられました。もちろん夢のことは秘密にしていました。

 さて、結果発表当日、僕はいつもどおり会社で働き、仕事を終えてもすぐに結果を見に行くことができず、同僚と飲んでいました。いよいよ、もう遅れてしまうという時刻にようやく、搬入場所の駐車場へ行き、暗い洞窟のようなその場所へ入って行きました。壁に、受賞作の写真が掲示されています。高鳴る胸をおさえて見ると、僕の絵の写真でした。膝が笑いました。

 洞窟の奥から白熱灯に照らされたたくさんの人達が、おめでとう! ブラボー!と言いながら大拍手で僕を迎えてくれています。「どこ行ってたの? 遅かったぢゃない、もう来ないのかと思ったわ」とスタッフの女性の声がしました。夢とおんなじでしたが、この夢は遂に覚めなかったのです。うそのような、ホントの話です。

 その後、すっかり僕は夢の信奉者になりましたが、以後、こんな正夢は二度とありません。

チケットの申し込み、さっそくありがとうございます。まだ余裕がありますので、よかったらどうぞ。ぢゃ。

 
 
 

僕が看板・壁画など描いた店が
12月3日オープンしました。

Cafe Hahn Hof
(カフェ ハーンホフ)

神戸市中央区明石町32
tel :078−321−0415
(元町・大丸の南、フェラガモとか入ってる明海ビルの地下1階)

 
 

Days of Angels
天使のカレンダー

絵*寺門孝之 / 文*三枝克之

リトル・モア  ¥1500+税

全国書店にて10月上旬発売