Back Number 19991019

 

 1年ほど前から、「FRONT」という水に関する雑誌で、「水辺のシネマ」という映画を題材にしたコーナーのカットを担当させてもらっていて、毎月、VTRが送られてきて、それからインスパイアされた光景を絵にする仕事をしています。

 今月は、ジョディ・フォスター主演の「ネル」という映画が送られてきました。皆さんはご存知でしたか? 「ネル」、僕は全く先行知識なしでこれを観たんですが、なかなか良かったです。ちょっと、わかりやすすぎるきらいもあるのですが、要所要所とってもちゃんとしていて、何より、ジョディ・フォスターが神々しくって、ギクっとしました。その中で「双子」というモティフが重要なパートで出てきます。先日観た、塚本晋也監督の「双生児」もその名の通り「双子」、それも善と悪(だけぢゃないですが)の両極に分かたれてた存在が一体化して、存在として「全く」成るというモティフが扱われてます。この「双子」というモティフが実は、僕にとってもなぜかいわゆる思春期のころから浮上して、僕は双子の片割れぢゃなかろうか、って本気で妄想を抱いてた時期があったのです。実はつい最近まで、それは尾を引いてました。

 で、この夏、なーんとなく、その呪縛から解放されたような、僕の片割れと遂に一体化したような満足感を感じていたのです。だから、「ネル」と、「双生児」をこの時期に観ることになったのも、何かのメッセージかな、なんて思ってます。善でも悪でもなく、正でも邪でもなく、男でも女でもなく、内でも外でもなく…いつもそれらの混ぜ合わせのような存在として、それらの混ぜ合わせのような「絵」を描いていければ、と願っている1999年、秋の日々です。

 10月19日、火曜、秋晴れ、夜に冷たい雨、少々、from 寺門孝之

 
   
 

Days of Angels
天使のカレンダー

絵*寺門孝之 / 文*三枝克之

リトル・モア  ¥1500+税

全国書店にて10月上旬発売