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m y d r e a m s
 

『聖家族』
 

 聖家族東京のあちこちに危険地区があり、そこは恐ろしい病原菌で満ちているため誰も寄りつかない。鉄条網や金網のフェンスで隔離されているその地区には病気の人たちがボロボロの姿で政府から見放されて棲み付いているという。しかし、その地区の奥の奥に聖家族が住んでいるらしい。それがKさん一家だという噂を耳にする。

 その噂の真偽を是非確かめなくてはならないと思った僕は神戸の中学校時代にトリップして黒い制服を着、友情を感じる2、3人のクラスメイトを連れだってその東京へ戻って来る。本当にKさんがいるか確かめに、僕たちは危険地区へ入っていく。夕闇。滅びた公園。噴水台(水はない)。僕たちは水鉄砲を持っていて、敵(時々襲ってくるやつらがいる)に水をかけてかわしながら奥へと進んで行った。

 高台の展望台のような所で僕と仲間は休んでいる。キラキラする夜景を眺めていると、もう東京が滅びつつあることが嘘のようだ。

 夜が深まると、不思議な琴の音色のような音楽が聞こえてきた。その音のする方へ行くとKさんがギターのような楽器を弾いているのが見えた。ギリシャ神話に出てくる楽器かなと思う。傍らには奥さんと二人の子供がその音色に耳を澄ませて佇んでいる。家族の周りを病気の人たちがとりまき、同じくその音色にうっとりと耳を澄ませて聴いていた。

 僕たちに気付くと奥さんは子供たちの肩を抱いて奥の闇の方へ消え入ってしまう。Kさんも楽器を弾くのを止めて立ち上がり、一度じっとこちらを見ると闇の奥へ入って行ってしまった。

 学生服を着た僕と仲間たちはさらにどこまでもKさん一家を追うことを誓って進む。

(1988.10東京・代官山)