義理の姉に、父親代わりだという男性を紹介される。やせた色の黒い人で、ふたりは久しぶりに会ったらしくにこにこしている。
まきちゃん美味しいコーヒーいれてね、といって二人は居間の方に移った。楽しそうに話す声を聞きながら、私は丁寧にコーヒーをつくりはじめた。
ひきたての豆をフィルターにうつして、熱湯を注ぐ。ゆっくりゆっくり。粉がふっくらとまるくふくらんで、顔にいい匂いの湯気があたる。
まばたきをひとつした。フィルターの中にはできたてのかに雑炊がほかほかと湯気をたてている。あ、まちがえた。もういっかい。よそごとを考えてちゃいけない。そう思って手順を思いだしながらつくるのに、何度くりかえしても最後の最後にはかに雑炊になってしまう。
そろそろもっていかないと、かに雑炊しかできていないことがばれてしまう、おいしいコーヒーをのんでほしいのに。大切なお客さまなのに。
そう思いながらうろうろと台所をあるきまわった。
(2004年1月26日)
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