< 一服一縁 >
2001年9月12日

コラム形式の<茶話>だとついつい更新をさぼりがちなので、
もう少し日記的な気軽な短文を、そのかわりにもうちょっとこまめに・・・。
そう思ってスタートさせたこの<一服一縁>のコーナーですが、
それすらも思いっきりさぼりまくり・・・・、
ああ、ほんとに精進が足りません。情けない・・・。
そしてこの数ヵ月は<えんがわ>のBBSの書き込みさえも
ご無沙汰してしまっていました。

言い訳をさせていただくと、この春から夏にかけては、
本当に旅に出ていたのです。
フランスのパリに半月ほど、ベトナムには
都合2回でトータル約1ヵ月半。
一応は今度出す本のための仕事ではありますが、
久しぶりの長い旅で、ボヘミアン気分に浸り、
新鮮な風をいっぱい食べてリフレッシュできました。

僕にはあまり趣味といえるようなものがないのですが、
「旅をすること」は数少ない僕の趣味であり、
もしかしたら特技といってもいいかもしれません。
で、今回の旅は、そんな僕の旅先での視線や考えごとを
そのまま本のカタチに編集してみよう!
という企画で出かけた旅です。
朝から夜まで、眠るとき以外は食事中もトイレの時も、
カメラ2台を手にしたままで、
フィルム400本、15000枚の写真を撮って帰ってきました。
じつは旅から戻ってもう1ヵ月にはなるのですが、
いまだに撮った写真の半分も見ることすらできず、
果たして納期に間に合うのでしょうか?
バカバカしいほどに膨大な写真の山を前にして、
「ああ、またバカが調子に乗って無謀なことを企画してしまった・・・」と
後悔しながら、脂汗を流す今日この頃です。

ともあれ旅行中に盗難や、病気、事故など
大きなトラブルにあわなかっただけでも、
自営業者の身としては一安心です。
(もちろん長い旅ですから、何事もなかったわけはなく、
紀行文のネタとしては困らない程度のエピソードはあったのですが、
それはまた別の機会にでも・・・。)
パリも決して治安がいいわけではないですし、
ベトナムは東南アジアでももっともやっかいな場所の一つです。
おまけに僕自身、ついつい怪しげなところへひかれて行ってしまう質ですし・・・。
実際、旅先で出会った人たちには、
日本人に限らず欧米の屈強な人たちでも、
けっこう酷い目にあった人がたくさんいました。
買ったばかりの仕事用のライカを
旅の初日にひったくられたカナダ人のデザイナーとか、
シクロ(ベトナムの人力車)で人気のないところに連れて行かれ、
待ち伏せした連中に身ぐるみ剥がされた韓国の軍人とか・・・。
そんな中、ただでさえカモになりやすい日本人の僕が、
カメラ2台というネギを背負って歩いて、何事もなかったというのは、
本当にラッキーなことです。

ところが、じつは本当の危険はそんな外国ではなく、
治安がいいとされる日本にあったのです。
帰国した僕を待っていたのは、複数のクレジットカード会社からの、
カード偽造事件の問い合わせでした。
僕の旅行中に、僕のクレジットカードを使って
合計100万円近い買い物がされていたというのです。
僕は旅行にそれらのカードを持参していたので、
おそらくは旅行に出る前に偽造されていたと思われるのですが、
カードを入れていた財布を盗まれた憶えも、
怪しげな店でカードを使った憶えもありません。
まったく身に憶えのない事態なのですが、
カード会社の人に言わせると、
数分でも手許を離すことがあったら、
磁気リーダーであっという間にコピーできるのだそうです。
幸い、僕は海外旅行中にそれらのカードを使用していたため、
僕自身のアリバイははっきりしていて、
そのお金を請求されることはなく、大事にはいたらなかったのですが、
ちょっとびっくりさせられた事件でした。
みなさんもくれぐれも気をつけてください。

そうそう、それと、旅行から帰ってみると、携帯電話のメールに
やたらと例の迷惑メールが入るようになっていたのもびっくりしました。
毎日5〜6件。あれって、受信する方もお金かかるんですよね!?
そして、根本的な防御策はまだないとか・・・。
ベトナムに滞在中はボラれ(ぼったくられ)ないように、
1000ドン、2000ドン(10円、20円)のことで
日々バトルを繰り広げていたわけですが、
日本では知らぬ間に、止める手立てもないまま、
毎日何十円か何百円か、
ズルズルとボラれているというわけです。

海外で僕が無事だったのは
たまたまラッキーだったということもありますが、
もちろんそれなりに常に用心をし、
自己防衛をしてきた結果でもあります。
しかし、今の日本に潜む危険は、
自己防衛ができない事態が多いように思います。
僕の身に起こったことはじつに些細なことですが、
昨今テレビや新聞をにぎわす通り魔的事件もまた、
ちょっと自分が気をつけたからといって
防げるようなレベルではないですよね。
自分で防ぐことのできない危険が潜む世の中というのは、
治安がいいとか悪いとかといったレベルを越えて、
かなり恐ろしい世の中と言ってもいいのではないでしょうか・・・。

なんだかまた一服が二服三服となり、
<茶話>ぽいエンディングになってしまいました。
編集者のくせに、我ながら<茶話>との書き分けが
あいまいなこのコーナーですが、
またそのうちポツリとつぶやきたいと思っています。
ではではまた。
茶を!

三枝克之


お気に入りだったパリ・オデオン座近くのベトナミ調カフェが、
今回訪ねたらなくなってしまっていました。残念・・・。
変わらないようで、変わるパリの街です。
(写真は98年撮影)

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