服家小銀杏庵

 小話その3 

ハンケチ

*スカートについての小話*

 最近ではどのアイテムも、ほとんど男女の別に関係なく用いられているので、このアイテムは男性専用、こっちのアイテムは女性専用というような事が少なくなってきました(本当に数えるくらいです、実に!)。しかし、このスカートなるものだけは…(実に!!)。「スカート」=「女性」という考えが、新しい世紀を迎えようとしているこのような時世になっても、なお根強く残っています(まったくもって、実に!!! *別に怒っているわけではありません。こういうの好きなんです*)。

 数年前―――僕が未だ青い果実であった中学生の頃、「どうして、男性はスカートをはかないんだ! 別に男性がはいてもいいじゃないか!」などと熱く思いを滾らせていましたが、姉に圧し止められ、その思いはあえなく消火、沈没しました。そんな、いわく(というには少々非力ですが)有り気なこのアイテム…「スカート」。今回は、「スカート」についての小話を書いていこうと思います。

 最初に「スカート」の定義ですが、主に女性のウエストから膝あたりまでを覆う衣服の事で、両脚が分かれていない、筒のような形の、腰衣状の物の総称、となっています。また、ドレスや、コートのウエストから下の部分や、メンズ・ウェアのイブニング・コート(燕尾服)や、モーニング・コートの裳裾(もすそ)部分も、時としてスカートと呼ばれることがあります。

 次に「スカート」の歴史です。「スカート」の歴史は古く、原始的な物では、古代エジプト時代の「ロインクロス」という長方形の布を腰に巻いた物があります。現在のラップ・スカートに近いその形態を見ると、「スカート」は初期的な形を保存したまま現代に至った貴重な衣服、と言うことが出来ます。語源は古代英語のスキルト(=scyrte 短い着物)からきており、ここからシャート(シャツ)とスカートに分かれていったと考えられています。ちなみに、フランス語ではジュープ(ジュップ)といい、これはアラビア語でウールの長衣を言うジュバ(=djoubba)からきています。

 定義や歴史はこんなところです。次に「スカート」の「レングス(=丈)」について紹介していきます。


最も長く、踝(くるぶし)辺りまである丈:

   アンクル・レングス
   マキシ・レングス
   フル・レングス
   フロア・レングス

脹脛(ふくらはぎ)の真中辺りの丈:

   ミディ・レングス
   ミッド・カーフ・レングス
   ミモレ

膝辺りの丈:

   すべてニー・レングスと言いますが、下から
   膝下丈
   膝丈
   膝上丈

膝上10〜15cmぐらいの丈:

   ミニ・レングス

太腿の真中辺りかそれより上の丈:

   マイクロ・ミニ・レングス
   サイ・レングス
   ハイ・サイ・レングス


となります。また、膝下丈は「シャネル丈」とも呼ばれています。これはシャネルの創始者ガブリエル・シャネルが、女性の体の中で膝が最も醜い部位であると考えていたが為に、膝が隠れる丈―――つまり、膝下丈を好んで発表していたからです。

 ここからは僕の勝手な意見になりますが、僕は「肌の露出度が高い服装」が好きではありません(今、僕が言っているのは「街を歩く時の服装」の事で、パーティー会場やビーチでの服装の事は除いています)。いくら綺麗な、高価な服装をしていても、肌の露出の多いスタイリングは下品になってしまいがちです。しかし、数年前から「ベビー・ドール」「ランジェリー」をインスピレーションの源としているデザインのアイテムが一般化してきており、その数は年を重ねるごとに増加しています。つまり、よりインナーに近い物がアウター・ウェアとして用いられるようになってきたのです(代表的なのがスリップやキャミソールです)。

 これには理由があります。冒頭で書いたように、男女の性差をミックスした「ジェンダー・ベンダー」というスタイルが定着したことによって、男の人は男の人らしい、女の人は女の人らしい、と言えるようなアイテムが減少してしまったのです。そのために、女性は、敢えて女性らしさを強調する為の着こなしが必要となり、女性ならではの優しさや可愛らしさを演出するためのトレンドとして「ベビー・ドール」が、より女性らしいセクシーさを演出するためのトレンドとして「ランジェリー」が、それぞれ格好のイメージソースとなったのです。

 また、この動きに伴って、スカートの「レングス」もだんだんと短くなってきていますが、もう一度勝手なことを言わせていただくと、僕は「ミニ・レングスと、それより短いスカート」も好きではありません。否、はっきり言って嫌いです。何故、このような勝手な事を書くかと申しますと、単に「動きづらそう」だからです。パンツのほうが機能的に優れていると思います。

 学生や企業の女性用制服は、その大多数がボトムにスカートを採用していますが、企業における女性のパンツ着用率は、過去20年前と比較すると3倍にもなるそうです。それなのに、やはりスカートの存在は消えそうにありません。これはなぜでしょう? 僕が思うに、トップスに関しても同じ事だと思うのですが、女性は自分自信を綺麗に見せる方法を良く心得ていらっしゃるからしょうね。これは至極大切な事だと思います。

 でも、僕としては「肌を見せているから綺麗」だとは思いません

 タレントの人でも街を歩いている人でも、トップスにはスリップドレスを着け、ボトムにはミニレングスのスカートを引っ掛けている―――僕の言うところの「露出の多い服装」をしている人達がいますよね。多くの場合、そういう人達は「スタイルが良いから肌を出せるんだ」という風に考えられがちです。「肌を多く見せている人はスタイルが良い」というような固定概念が、広く一般化しているからでしょう。

 しかし、これは間違っています。「肌を多く見せている人はスタイルが良い」のではなくて、「肌を見せているからスタイルが良いように見える」のです。パッと一目、ある人の服装を見たときに目に付くのは、やはり肌を見せている部分ですから(僕だけですかねぇ?)、それのインパクトの方が強くて、全体のスタイルがぼやけてしまうのです。一種の錯覚です。例をあげてみますと、お尻が大きいからと言って、見えないようにするために長めのシャツを着たりする人がいますが、これはまったく逆で、見えるようにした方が小さく見られます。これと同じなのが、去年流行った水着のパレオ(長方形の布を腰に巻きつけた物)です。これも、御尻を余計に大きく見せてしまうので、要注意DEATH。また、ふくよかな人がブカブカの服を着るのも逆効果です。フィットした物を身に着けると良いでしょう。肌の露出度の高い服装をしている人の中にも、もちろんスタイルの良い人はたくさんいらっしゃいますが、その様な人達はどんな格好をしても、いいかえると「肌の露出の少ない服装」をしていても美しく見えます

 まあ、でも確かに、スカートはパンツに比べて肌の露出度が高いアイテムですから、スカートの方がより容易に、自分をスタイル良く見せられるのかもしれません。しかし、パンツでも、自分を格好良く、綺麗に見せる事は十二分に出来るはずです。ただやはり、パンツを綺麗にはきこなすにはスタイルが良くなくてはいけないので、スカートに押され気味になっているのでしょうが…。がんばれパンツ!(←なんか変ですね)

 肌の露出が少なく、女性がより女性らしく綺麗で上品に、よりセクシーに見え、且つ機能的に優れているアイテム。こんな服が流行れば良いのになぁ、と思います。じゃないと―――今のままでは目のやり場に困ってしまいます…。

 今回はこの辺で失礼致します。またのご来店、心待ちにいたしております。それでは。小銀杏でした。

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