かねてよりの畏友・沼田元氣さんから突然に「寺門さん、歌舞伎の絵どうですか」と誘われて著者の先生にお会いしたのが震災の衝撃もまださめやらぬ1995年の春先。どんな先生かと思いきや、僕とさほど歳もかわらぬお洒落でスマートな女性。
その田口さんと沼田さんにおだてられてそそのかされて引き受けたものの、苦労しましたねぇ、歌舞伎の絵。天使を断って、洋楽を断って、毎日昼夜、歌舞伎ビデオ三昧、浮世絵三昧で数ヶ月。延々〆切を延ばしてもらってようよう完成にこぎつけました。
最後まで描けずにのばしのばしにしていた「四谷怪談」、もう延ばせないと筆を取ったのがちょうどお盆中日だったりして、ぞく。
でも苦労の甲斐あって気に入った絵が仕上がりました。沼田さんの装丁も飛び切りクール・カツ・キュートで、大スキな一冊となりました。
その後も、すっかり歌舞伎には深入りしていて、いつかまた新しいカタチで、歌舞伎の絵の本、出したく思っています。
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