いまでこそ僕は画家などといって、毎日画室で画用紙や画布にむかい、絵の具を滴らせているのであるが、その昔(と言ってもほんの10年も経ってやしない)、僕はデジタル・アーティストだったことを知っている人はもうそう多くない、かも。
1984年にコンピューターで絵・イラストレーションを描く仕事に就いて以来、文字通り日進月歩のデジタル業界の真っ只中で数年を過ごし、たくさんのシステムで絵を描く機会に恵まれた。それは今思い返しても、素晴らしい、かけがえのない甘い日々だった。
1993年、コンピューターとの蜜月に終止符を打ち、10年を過ごした東京から故郷・神戸へ生活・制作の場を移し、改めて「絵」を描き始めたのだが、僕がそれ以前にコンピューターを通して見、得てきたヴィジョンズは、今でも、絶対的な自信を持って自慢できる。
僕の初めての作品集「かごめドリーム」はそんなコンピューター時代の数千に及ぶ画像からピックアップして纏めた「ツル」と、ペインティングを纏めた「カメ」の2分冊となっている。
以後、全くデジタルから足抜けし、「絵」の展覧会ばかりしてるので、どちらかというと「カメ」の方が売れるようだが、本のテンションとしては、僕自身「ツル」の方が高いんぢゃないかと正直思ってる。
この「ツル」の極みまで、僕はこれからの絵を描く人生を懸けて、コンピューター無しでもう一度登りつめたい、な〜んて思ってる。
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